盛の哀愁
沖縄で看板屋を営んでいる。 看板と木工とレーザー彫刻とオリジナルグッズが専門だ。 もっとも、専門というのは「他にできることがない」という意味である。
先日、お客様からオリジナルグッズの依頼が来た。 「温かみのある木製キーホルダーを」という。 温かみ、という言葉ほど曖昧なものはない。 木は常温なのだから、温かくはない。 いや、沖縄の夏なら確かに温かい。いや、熱い。 レーザー彫刻機に向かう。 この機械、高かった。ローンがまだ残っている。 つまり私はこの機械に所有されているのだ。 彫刻しながら思う。この仕事に何の意味があるのか。 人類の歴史に私の彫刻が貢献することはない。 しかし、誰かが私の作ったキーホルダーを見て微笑むかもしれない。 それで十分ではないか。いや、十分ではない。 でも他に何ができる。 完成した。 なかなか良い出来だ。自画自賛である。 他に誰も褒めてくれないから自分で褒めるしかない。 お客様が受け取りに来た。「素敵です!」と笑顔で言った。 私も笑った。目頭が熱くなった。沖縄の日差しのせいだ、きっと。

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